α-シクロデキストリン(以下,α-CD)は,コレステロール代謝や糖代謝に有効な食物繊維の一つであるが,その有効性や作用機序については不明な点が多い。本研究では,マウスにブドウ糖と流動食を経口投与した際のα-CDの高血糖防止効果を調べた。2g/kgのα-CDを投与したところ、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)の分泌が増加し、肝臓でのグルコースの隔離が促進されることで、グルコース負荷後の高血糖が抑制された。一方、1g/kgのα-CDは、GLP-1やインスリンの分泌を増加させることなく、同様に高血糖を抑制した。さらに、α-CDを経口投与すると、レシチンが腸管内腔液に取り込まれ、脂質ミセルの形成が阻害される。重要なのは、in vitroでα-CDをレシチンと一緒に摂取すると、in vivoでのα-CDの高血糖改善効果が無効になることであり、これはSREBP2の標的遺伝子(Ldlr, Hmgcr, Pcsk9, Srebp2)の腸内mRNA発現の増加と関連していた。[1]
α-CDは、経口投与すると腸内で濁った沈殿物を形成し、疎水性の内腔に小分子を含む包接体を形成することが明らかになった。α-CDを腸管内に投与すると、α-CDによるレシチンの包接が胆汁酸ミセルの形成を阻害し、宿主によるコレステロールの吸収を阻害することが報告されている[2]。腸管腔内では、胆汁酸塩やレシチンがトリグリセリドやコレステロールとミセルを形成し、食事の脂肪の吸収に重要な役割を果たしている。細胞外のコレステロール濃度は、吸収上皮細胞や肝細胞がSREBP2シグナルを介して感知している。したがって、α-CDによって腸管上皮へのコレステロール供給が遮断されると、腸内のSREBP2が活性化され、コレシストキニン(CCK)の分泌が促進され、肝臓でのグルコース産生が抑制される可能性が高い。
α-CDが糖負荷後に抗高血糖作用を発揮するのは、腸管内にレシチンを取り込ませ、SREBP2を活性化させることで、腸・脳・肝軸を介してCCKの分泌を促し、肝でのグルコース産生を抑制することが知られている。
写真 [2]から
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