2021年6月24日
アントラセン(ANT)の3種類のCD(β-CD,HP-β-CD,SBE-β-CD)への包接挙動について,分子動力学(MD)シミュレーションを行った。MDの結果、ANTは3種類のCDの空洞に自発的に入り込むことがわかった。ただし、SBE-β-CDの場合は、幅広の縁からしかANTが空洞に入らないという違いがある。次に、置換基である2-ヒドロキシプロピル(HP)とスルホン化ブチル(SBE)がCDの構造に与える影響を、各CDのグルコースユニットの構造の歪みを解析することで調べた。その結果、中性のβ-CDは円錐形の構造を示すが、HP基やSBE基の存在は構造に大きな影響を与えることがわかった。置換基の変動によりグルコースユニットが反転することで、2次リムが狭くなる。ANTを空洞内に入れると、3枚のCDの空洞のコンフォメーションはある程度回復した。一方、置換基は空洞の軸に沿って伸び、ゲスト分子と相互作用している。各CDとANTの間の相互作用を解析することで、置換基が疎水性空洞の体積を大きくしていることがわかった。置換基とグルコースユニットの両方がグルコースユニットの両方がゲスト分子との相互作用に寄与していると考えられる。また、CD環のコンフォメーション変化により空洞が縮小し、ANT分子との緊密な結合が生じる可能性がある。
本論文には、複合体のコンフォメーションに関する優れたコンピューターグラフィックスが掲載されている。
Yan X, Wang Y, Meng T and Yan H (2021) Computational Insights Into the Influence of Substitution Groups on the Inclusion Complexation of β-Cyclodextrin. Front. Chem. 9:668400.
doi: 10.3389/fchem.2021.668400
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