MDシミュレーションを用いて、SBE-β-CDの凝集体がレムデシビルの可溶化に果たす役割の可能性を検討した。賦形剤に含まれるCDの異なるSBE置換の数と位置の影響、および薬剤のプロトン化状態の両方を取り上げた。水溶液中で中性およびプロトン化されたレムデシビル分子がどのように自発的に凝集するかが示された。プロトン化した構造の凝集体は,電荷を帯びた分子に生じる静電的な反発のために,中性の薬物の凝集体よりも小さくなることがわかった。SBE-β-CDを溶液に加えると,非常に高い薬物濃度であっても,両方のプロトン化状態のレムデシビルの自己凝集を明らかに防ぐことができた。可溶化のメカニズムは、数枚(2-4枚)のCDで形成された小さなクラスターにレムデシビル分子がカプセル化されることであると考えられる。今回のシミュレーションでは、数百ナノ秒の時間スケールで分子がクラスター間で交換され、クラスター間で動的平衡が見られた。どのシミュレーションでも、自発的な包接化合物の形成は観察されなかったが、CDとレムデシビルの間の相互作用は、環状分子の周辺基を介して行われていた。置換基の数と薬剤のプロトン化状態は、分子間の相互作用、ひいては凝集に大きく影響する。SBE-β-CDの存在下では、薬剤のプロトン化形態が交差凝集に有利なようである。このことは、荷電分子の全クラスター数が中性構造の場合よりも典型的に少ないことからもわかる。これは、荷電した薬剤とSBE-β-CDの間の静電相互作用によるものである。プロトン化したレムデシビルとCDの間の相互作用は、中性構造の場合よりも著しく強く、前者ではCDと薬剤のH結合が約2倍になっていることがわかった。凝集体の構造については、シミュレーションでは1~2分子の薬剤と約3分子のCDで構成されるパターンが観察された。CDの置換数を増やすと、賦形剤の凝集性が低くなる一方で、薬物の自己凝集性はわずかに増加する。この挙動は、中性構造よりもプロトン化した薬物の方が明確である。
A. Piñeiro, J. Pipkin, V. Antle, R. Garcia-Fandino, Aggregation versus inclusion complexes to solubilize drugs with Cyclodextrins. A case study using sulphobutylether-β-cyclodextrins and remdesivir, Journal of Molecular Liquids (2021), doi: https://doi.org/10.1016/j.molliq.2021.117588
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