β-シクロデキストリン(β-CD),ジメチル-β-CD(DM-β-CD),ヒドロキシプロピル-β-CD(HP-β-CD)という化学的に多様な3種類のCDを用いて,薬物濃度が液液相分離(LLPS)濃度を超えたときの水相中の非晶質薬物溶解度と薬物の最大熱力学的活性に及ぼすCDの影響を調べた。イブプロフェン(IBP)の非晶質溶解度は,IBP/CD複合体の形成により,CD濃度の増加に伴って実質的に直線的に増加した。驚くべきことに、β-CD溶液中のIBPの結晶溶解度は、IBP/β-CD複合体の結晶溶解度が制限されているため、β-CD濃度が3mM以上でプラトーに達するが(BS型溶解度図)、IBPのアモルファス溶解度は、β-CD濃度が3mMよりも高くなっても直線的に増加した。CD溶液中のIBPの非晶質溶解度は、主にLLPSを介したIBP過飽和溶液の水相とIBPを主成分とするもう一方の相、すなわちIBPリッチ相への相分離に影響されていた。NMRスペクトロスコピーにより、DM-β-CDはIBP濃度がアモルファス溶解度を超えるとIBPリッチ相に分配され、β-CDとHP-β-CDはIBPリッチ相への混合が少ないことがわかった。NMR diffusometryによると、DM-β-CD溶液では、緩衝液中に比べて最大自由IBP濃度が減少していた。DM-β-CDとIBPリッチ相の混合により、IBPリッチ相におけるIBPの化学ポテンシャルが低下し、その結果、水相におけるIBPの最大熱力学的活性が低下した。一方、β-CDまたはHP-β-CDが存在する場合、最大遊離IBP濃度は変化しなかった。DM-β-CD置換基の疎水性が、IBPが豊富な相への分配に寄与しているのかもしれない。本研究では、薬物の見かけの非晶質溶解度だけでなく、薬物の最大熱力学的活性に対するCDの影響が明らかになった。この点は、難水溶性薬物の効果的な吸収を改善するために考慮すべきである。
Keisuke Ueda, Kenjirou Higashi, Kunikazu Moribe (2021) Amorphous Drug Solubility and Maximum Free Drug Concentrations in Cyclodextrin Solutions: A Quantitative Study Using NMR Diffusometry. Mol. Pharmaceutics 2021, 18, 7, 2764–2776, https://doi.org/10.1021/acs.molpharmaceut.1c00311
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