熊本の本山のチームは、最近、葉酸を添加したCDの白血病および卵巣がんにおける新しい成果を発表した(1,2)。FA-M-β-CDは、RFC(reduced folate carrier)陽性のヒト卵巣がんES-2細胞株に対して優れた細胞傷害活性を示した。ES-2(RFC+)細胞におけるFA-M-β-CDの細胞傷害活性は、ミトコンドリア膜電位の低下をきっかけとしたアポトーシスによるものではないことがわかった。さらに、FA-M-β-CDは、ES-2(RFC+)細胞を保有するBALB/cヌードマウスの生存期間を延長した。これらの結果から、FA-M-β-CDは、転移性卵巣癌の治療薬としての可能性が示唆された。
HP-β-CDは、アポトーシスや細胞周期の停止を誘導することにより、抗白血病活性を有するが、その抗腫瘍活性は腫瘍細胞選択性を欠くものである。そこで、多くのがん細胞に葉酸受容体が高発現していることを利用して、HP-β-CDに腫瘍細胞選択性を付与するために、葉酸を付加したHP-β-CD(FA-HP-β-CD)を合成した。FA-HP-β-CDは慢性骨髄性白血病(CML)細胞の増殖を抑制し、FA-HP-β-CDの細胞死誘導効果のメカニズムにはオートファジーが関与していると考えられた。また、FA-HP-β-CDとABLチロシンキナーゼ阻害剤(イマチニブ、ポナチニブ)の併用は、CML細胞に対して相乗的な阻害効果を発揮した。BCR-ABL誘発白血病のマウスモデルでは、FA-HP-β-CDはHP-β-CDやイマチニブよりも強い白血病進行抑制効果を示した。
- Hoshiko, T.; Kubota, Y.; Onodera, R.; Higashi, T.; Yokoo, M.; Motoyama, K.; Kimura, S. Folic Acid-Appended Hydroxypropyl-β-Cyclodextrin Exhibits Potent Antitumor Activity in Chronic Myeloid Leukemia Cells via Autophagic Cell Death. Cancers 2021, 13, 5413. https://doi.org/10.3390/cancers13215413
- Onodera, R., Sakai, A., Tokuda, A. et al. The effect of folate-appended methyl-β-cyclodextrin increases on survival rates in a peritoneal dissemination mouse models of human ovarian cancer. J Incl Phenom Macrocycl Chem (2021). https://doi.org/10.1007/s10847-021-01109-y
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