膜不透過性の化合物を細胞内に輸送することは、親水性や両親媒性の化合物や薬剤を効率的に細胞内に送達するための前提条件である。細胞質への輸送は、理想的には制御可能で、生物学的に適合した分解可能な担体を伴うべきである。これらの課題に対処するため、シクロデキストリン両親媒性物質を生分解性ペプチドシェルで安定化させたナノコンテナを開発し、蛍光標識カーゴをヒト細胞内に送達する可能性を分析した。シクロデキストリンベシクルにチオールを含む短いペプチドやシスタミンで架橋したポリペプチドのシェルを、ホスト・ゲストを介して自己組織化することで、それぞれ酸化還元反応性と生分解性を有する短いペプチドシェル付きベシクル(SPSVss)やポリペプチドシェル付きベシクル(PPSVss)を作製した。SPSVssが透過性で安定性が低いのに対し、PPSVssは貨物を効果的に封入し、還元条件やペプチダーゼ処理をきっかけに、膜不透過性の貨物を厳密に制御して放出することがわかった。この新規PPSVSSは、初代ヒト内皮細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)や子宮頸がん細胞に容易に取り込まれ、細胞内のエンドソームの還元的な微小環境によって、親水性のカーゴが細胞質に放出されることが培養細胞実験で明らかになった。このように、PPSVSSは、膜不透過性のカーゴの自然なバリアとしての細胞膜を克服するための、高効率で生分解性のある調整可能なシステムである。
Kudruk S, Pottanam Chali S, Linard Matos AL, Bourque C, Dunker C et al. (Ravoo BJ) (2021)Biodegradable and Dual-Responsive Polypeptide-Shelled Cyclodextrin-Containers for Intracellular Delivery of Membrane-Impermeable Cargo. Advanced Science. 2100694. doi: https://doi.org/10.1002/advs.202100694.
コメント