2021年2月22日
ニーマン・ピック病C1型の治療法としてHPβCDを用いると、衰弱症状を軽減し、寿命を延ばすことができるが、治療に用いられる用量は難聴の原因となる。げっ歯類を用いた初期の研究では、HPβCDは治療後1週間の間に蝸牛外毛細胞(OHC)のみを選択的に損傷させることが示唆されていた。しかし、最近のin vivoおよびin vitroでの研究では、この損傷は時間の経過とともに徐々に悪化し、より広範囲になる可能性が示唆された。この仮説を検証するために、ラットにHPβCDを1、2、3または4g/kgを皮下投与し、8週間待って長期的な組織学的影響を評価した[1]。 その結果、2つの最高用量のHPβCDはOHCだけでなく、内毛細胞、柱細胞、その他の支持細胞にも広範囲に損傷を与え、感覚上皮の崩壊と扁平化をもたらした。4g/kgの投与により、蝸牛の基底部3分の2以上の外側の毛髪細胞と内側の毛髪細胞の4分の3がすべて破壊され、蝸牛の基底部ターンの中央部にある手綱の神経線維の85%以上とらせん状神経節ニューロンの80%以上が破壊された。内毛細胞、柱状細胞、神経線維、らせん状神経節ニューロンの遅延変性に至るメカニズムはまだよく分かっていないが、コルティ器官の感覚細胞および/または支持細胞の変性に起因する栄養支持の喪失に関連している可能性がある。内耳の感覚上皮への大規模な損傷にもかかわらず、血管筋の血管と前庭毛細胞は正常なままであった。
[1] D. Ding, H. Jiang, R. Sali (2021) Cochlear spiral ganglion neuron degeneration following cyclodextrin-induced hearing loss. Hearing Research 400, 108125. https://doi.org/10.1016/j.heares.2020.108125
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