米国陸軍は最近、表面に融合前の安定化スパイクを表示するフェリチンナノ粒子プラットフォームをベースにしたSARS-CoV-2サブユニットワクチンを開発した[1]。スパイクタンパク質は、フェリチン分子上に安定したスパイク3量体形成を生成するように改変された。SARS-CoV-2のWuhan-Hu-1株の安定化した前融合スパイクタンパク質を遺伝子的に連結し、フェリチン融合組換えタンパク質を形成し、スパイクフェリチンナノ粒子(SpFN)を自然に形成させた。フェリチンは、24個の球状粒子に自己凝集する天然由来のユビキタス鉄担持タンパク質で、現在、インフルエンザのワクチンプラットフォームとして2つの第1相臨床試験(NCT03186781、NCT03814720)で評価されており、さらにエプスタインバーウイルスとインフルエンザH10(NCT04579250)の2試験が募集段階に入っている。
ウォルター・リード陸軍研究所(WRAIR)は、スパイクフェリチンナノ粒子(SpFN)COVID-19ワクチンが強力な免疫反応を引き起こすだけでなく、懸念されるSARS-CoV-2亜型や他のコロナウイルスに対する幅広い防御を提供する可能性があるという一連の前臨床試験結果について最近発表した。報告書では、「このワクチンは、COVID-19ワクチンの中で際立っている。多面的なナノ粒子上のコロナウイルスのスパイクタンパク質の反復的で秩序だった表示は、著しく広い保護に変換するような方法で免疫を刺激する可能性がある。”と報告した。
WRAIRの新興感染症部門(EIDB)の科学者達は、現在のパンデミックに対処し、懸念される変種や将来出現しうる類似ウイルスに対する第一線の防御として働くことを目的とした、先見性のある「パンSARS」戦略の一部として、フェリチンプラットフォームを基盤としたSpFNナノパーティクルワクチンを開発した。
リポソーム、メソポーラスシリカ、シクロデキストリンなどの他のナノキャリアと比較して、フェリチンは固有の空洞サイズ、優れた水溶性、および生体適合性のために、食品、栄養、および医療の分野で大きな注目を集めている[2]。さらに、フェリチンナノケージは、さまざまなナノ粒子を合成するための汎用的な生体テンプレートとしても機能する。近年では、フェリチンナノケージの可逆的な分解・再組織性とバイオミネラリゼーションを利用して、栄養物、生理活性分子、抗がん剤、ミネラル金属イオンなどのゲスト分子のカプセル化および送達を行うための構造が研究されている。
[1] Carmen, J.M., Shrivastava, S., Lu, Z. et al. SARS-CoV-2 ferritin nanoparticle vaccine induces robust innate immune activity driving polyfunctional spike-specific T cell responses. npj Vaccines 6, 151 (2021). https://doi.org/10.1038/s41541-021-00414-4
[2] Zhang C, Zhang X, Zhao G. Ferritin Nanocage: A Versatile Nanocarrier Utilized in the Field of Food, Nutrition, and Medicine. Nanomaterials (Basel). 10(9):1894 (2020).doi:10.3390/nano10091894
コメント