HPBCDは、発育途上の聴覚および前庭系に大きなダメージを与える。
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、ニーマンピックC1(NPC1)リソーム貯蔵病の治療に用いられるコレステロールキレート(包接)剤であり、外有毛細胞を優先的に破壊することで哺乳類の難聴を引き起こす。コレステロールは初期の神経発生に重要な役割を果たしていることから、HPβCDは成体ラットよりも出生後の蝸牛や前庭構造に広範囲の損傷を与えるという仮説が立てられていた[1]。この仮説は、HPβCDを成体ラットに投与し、生後3日目(P3)の蝸牛および前庭器官の培養を行うことで検証した。HPβCDを投与した成体ラットでは、投与3日後に聴覚障害と外有毛細胞喪失が発生し、損傷は高周波数基底部から低周波数先端に向かって投与量とともに増加した。