神経保護作用のあるフラボノイドであるケルセチンは、近年、アルツハイマー病の早期治療への応用が示唆されている。しかし、ケルセチンは溶解度が低く、ファーストパス効果が大きいため、経口投与には適していない。また、血液脳関門を非侵襲的に通過し、迅速な作用発現が期待できる鼻腔内投与は、脳へのターゲティングが可能である。そこで、ケルセチンの脳内移行性を高めることを目的として、ケルセチン-シクロデキストリン(メチル-β-シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)の凍結乾燥物に、マンニトール/レシチンの噴霧乾燥微粒子を配合した鼻腔用パウダーを調製した。ケルセチンの37℃、pH7.4での溶解度は、シクロデキストリンと複合化することで19~35倍に増加した。凍結乾燥物とマンニトール/レシチン微粒子を様々な比率でブレンドすることにより、X線回折および走査型電子顕微鏡分析で観察されるように、形態的に改善された粉末が得られた。Franz細胞を用いたin vitro評価では、純粋なケルセチンの17倍(メチル-β-シクロデキストリン)から48倍(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)の速さで溶解・浸透することが明らかになった。その結果、純粋なケルセチンと比較して、ウサギの鼻粘膜上での粉末の輸送効率が高いことがわかった。また、ケルセチン-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン粉末は、純粋なケルセチンの透過量がごくわずかであるのに対し、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン粉末では0.03±0.01から0.22±0.05μg/cm2、メチル-β-シクロデキストリン粉末では0.022±0.01から0.17±0.04μg/cm2の範囲で透過したことから、ケルセチン-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン粉末の総合的な性能の高さが確認された。
Papakyriakopoulou P, Manta K, Kostantini C, Kikionis S, Banella S, Ioannou E, Christodoulou E, Rekkas DM, Dallas P, Vertzoni M, Valsami G, Colombo G. Nasal powders of quercetin-β-cyclodextrin derivatives complexes with mannitol/lecithin microparticles for Nose-to-Brain delivery: In vitro and ex vivo evaluation. Int J Pharm. 2021 Aug 16:121016. doi: 10.1016/j.ijpharm.2021.121016. Epub ahead of print. PMID: 34411652.
写真提供:nlc.com
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